ワイヤレススピーカー「響筒」
2019/10/31
Facebookでも少し告知させていただいていましたが、
11月8日、パナソニックさんと開化堂の共同でつくったワイヤレススピーカー「響筒(きょうづつ)」を販売できることになりました。
蓋を開けると同時にゆっくりと音が聞こえはじめ、開いた瞬間に音がふわっと広がる。それはお茶の香りが部屋に広がっていく感覚と似ているかもしれません。蓋を閉じるときは、蓋の自重でゆっくりと落ちるに従って音もフェードアウトしていく、手に持って開閉すると、手のひらで音の響きを感じていただける感覚を味わっていただけます。単にワイヤレススピーカーで音を聞くと言うだけではなく、色々なものを感じ、次の代へ継ないで行くことのような、何かを感じていただけるものになったのではないか?と思っています。
100個のみと限定販売になりますが、プロジェクトスタートから4年、ようやく皆様にお届けすることができます。
4年前パナソニックさんから、私もメンバーであるGO ONにオファーをいただきスタートした「Kyoto Kaden Labo」と言うプロジェクトですが、当初は、「これで本当に何か形にできるのか?」というくらい難航して、半年近く何も形にならない時期がありました。その時は何を目指して、何をつくるのか、そういった共通意識や共通言語を作っていた時期だっと思います。同じものづくりでも、ベクトルの方向性が違うものづくりをしてきた家電と工芸だから、それは仕方がないことだったと思います。中川木工芸の中川さんがよく言うのですが、お櫃屋としてはナショナルさんが電気釜を作って廃れたと、その時は天敵でしかなかったと。
でも今100年先の良い暮らしってなんだろうと考えたらやっぱり同じだよな、ともみんなで話し合っていました。
パナソニックのデザイナーの皆さんとGO ONメンバーで、座禅を組んだり、GO ONメンバーの各工房で実際に制作体験をしたり、合宿して銭湯一緒に行ったり、できるだけ多くの時間を共有するようにしました。そして何度も話し合いを重ねる中で、ようやく自分たちの進むべき方向性として、「100年先の心地よい暮らし」を目指した「五感や記憶に響く体験価値」というコンセプトが見えてきました。そんな中で、ようやく響筒へとたどり着いて行きました。
プロトタイプができてから、京都やミラノでの展示、そしてミラノサローネでのプロジェクト自体の受賞。その中で世界の評価はどんどん上がって行きました。
でもプロトタイプと製品は似て非なる物。皆さんの手に届けると言うことは簡単なプロセスではありませんでした。経年変化していくことへの許容や、茶筒自体が響くことが体験としては面白い反面、音のクオリティをどう上げるのかという難しさ。素材自体の薄さのこだわりと検証。ここに書ききれない色々なことがありました。
そんな中で時間はかかりましたが、このプロトタイプの発想・形をほぼそのまま製品化できたことは、本当に嬉しく、改めて上蓋の内側の刻印をみた瞬間、やっとここまで来れたんだなとしみじみとなりました。
作る上では、一つ一つはきちんと作れる開化堂、ただ隣のものと全く同じかと言うとそうではない。逆に全てのものが同じクオリティのパナソニックさん、そこには最初は大きなギャップがありました。お互いに歩み寄り、作る工程も行ったり来たりしながら、いかに最初の思いを形にするのかを、お互い相手を考えてやりきった結果がこうして結びついたのだなと思います。
最終調整を行うために5代目と共にパナソニックさんの工場に入りました。そこには普段通り仕事できるように畳が置かれていて、いつもの開化堂を受けいれてもらえたんだと嬉しかった。でもちょっと最初は「お客さん」的な感じの雰囲気もありました。ただ、お互いのものづくりの基準を共有しながら、一緒に話をし、作業を行うことで、最後はこの写真みたいに!
無事、時間内にきっちりと終われた瞬間、開化堂とパナソニックさんが心を通じて一緒に慣れた瞬間でもありました。
11月8日から、Kaikado Café 2階にて「響筒」を展示販売いたします。
実際に手にとって、手のひらで音を感じる体験を是非。
お客様のスマホとペアリングして音楽を聴いていただくこともできます。
皆様のお越しを心よりお待ちしています。