ドボ漬けのブリキ
2017/11/18
開化堂の茶筒の素材に使っている「ブリキ」。
ブリキは、昔ながらの「ドボ漬け」という製法でつくられたブリキの板を仕入れて使っています。
このドボ漬けブリキ、名前の通りうすい鉄板を、熱で溶かしたスズの中にドボンと浸し、しばらくつけて表面にスズの膜を定着させて作られるもので、鉄板をスズの中で移動する時や、引き上げる時のスズの流れが特有の文様となって、全体的に完全な鏡面ではなく、少しくすんだ仕上りになります。
近年では、電気を帯電させてスズを定着させる「電気メッキ」と呼ばれるブリキが主流で、表面が非常に滑らかで鏡のように仕上ります。ですが、開化堂をはじめた頃と同じ手法で作られた、風合いあるドボ漬けのブリキを使い続けたいと思っています。
今、作っていただいているブリキの場合、スズの硬度は高くないので厚くつけると非常に柔らかな印象になります。反面傷がつきやすくもなります。
これもやはりスズの特性として大事だと考えているところで、例えば、木材の無垢板と同じで、使っていく中で傷や擦れなどで風合いが変化していきます。これが、使う人だけの味になっていくのです。
上がドボ漬けで作られたブリキ、下が電気メッキのブリキです。
その時は、うちと同じように取引されていた別の会社さんが、なくなるとどうしても困るということで、その機械をそのまま買い取って引き継がれました。
そこに五代目と一緒に頼み込んで、開化堂用にスズを特別厚くつけて、表面を綺麗に仕上げてもらったブリキを仕入れさせてもらっています。
世間的には、ドボ漬けのブリキはもう作られていないとされているようで、
ある研究者の方は、うちがドボ漬けのブリキを使っていると聞いて、驚いて飛んでこられた程です。
今、お願いしている会社さんがやめられたら「もう最後は自分で作るしかないかな」
なんて思いながら、何とか今後も仕入れられるように思案中です。